Sports Nutrition エネルギーの基礎 NO.1
 一般に,男性の1日当たりのエネルギー摂取量は1,000kcal(4.2MJ)〜5,000kcal(20.8MJ)で,女性は1,000kcal(4.2MJ)〜3,500kcal(14.7MJ)と計算できます。
 しかし,個々の体格,体型や運動量の違いを考慮すれば,例えば野球選手のような特定のスポーツ選手について一般化して,各人1日当たり一定のエネルギー必要量を設定してしまうのは誤りで危険なことです。
 同様の理由から,種々のスポーツ活動時のエネルギー消費量の一覧表,例えば15分間の体操による消費エネルギーは100kcal(420kJ)であることを示す表などは誤解されやすいので注意が必要です。
 同じスポーツ活動でも行う人の体型や体格の違いによって,また,ある一定時間に活動するスピードの違いによってエネルギー消費量はそれぞれ異なってきます。
 このコーナーを読み終えるころにはエネルギー計算,エネルギー代謝についての考え方を深めることができると思いますが,さしあたり次のことを覚えておいていただきたいです。

@実際に必要な量よりもエネルギー摂取が超過すると,過剰なエネルギー量は体脂肪として蓄えられ,体重は増加する。
Aエネルギー摂取が不足すると,必要に応じてからだに蓄えられているエネルギーが動員され,体重は減少する。

1. エネルギー代謝
 細胞は食物中に存在する化学的ポテンシャルエネルギーを身体機能維持のための別の形のエネルギーに変換させています。
エネルギーには動作のための機械的エネルギー,体温維持のための熱エネルギー,神経の刺激伝導のための電気的エネルギー,ある種の生物における光エネルギーなどがあります。
 これらの生物の体内で起こるエネルギーの変換,利用などのすべての過程を代謝と呼んでいます。
 エネルギー代謝の栄養学的問題とはエネルギー摂取と消費のバランスすなわちエネルギー出納を意味しているものです。
 食物中のポテンシャルエネルギーは糖質(炭水化物)やタンバタ質,脂肪として合成されている分子中の化学的な結合中に“捕捉される”ことによって貯蔵されています。食物が摂取され,消化され,吸収されて体内でタンパク質や糖質,脂肪の貯蔵形に同化される一連の過程によって,このエネルギーがエネルギーを必要とする生理的過程のために利用できるようになっています。
 エネルギーは運動などにおける筋活動のためにだけ必要なわけではありません。タンパク質や脂肪,糖質の合成,神経の刺激伝導のようなあらゆる生理的過程はエネルギーなしでは進行しません。それどころか,細胞内のはとんどすべての過程で何らかの形でのエネルギーが必要とされています。
 エネルギーが必要になると,エネルギーはそれが捕捉されている化学的結合を解離することによって得られ,望まれる過程が進行していきます。 エネルギーの連続的な供給がないと細胞は正常に機能しなくなってしまいます。

A エネルギーの測定法
 身体のエネルギー出納のバランスを算出するためにはエネルギーを正確に測定することが必要になります。
 すべてのエネルギー代謝の過程は最終的には,食物中に貯蔵されているポテンシャルを遊離させるための,細胞内での有酸素的に栄養素を完全燃焼させる過程に左右されています。酸化と呼ばれるこの過程は最終的にエネルギーの遊離と二酸化炭素と水をもたらすことになります。
 エネルギーの一部はエネルギー流通のために便利な形、すなわちアデノシン三リン酸(ATP)として利用され,生理的過程,代謝的過程が進行していきます。 また、過剰なエネルギーは熱放散されていきます。
 細胞でエネルギーが必要なときはATPが分解され、ATPの高エネルギー結合中に一時的に貯蔵されていたエネルギーが放出されて利用されます。

B. エネルギーの単位
 すべてのエネルギー変換は最終的に廃棄物として熱を産生する。それゆえ,エネルギーの単位として最も一般的に用いられるのはカロリーであり,エネルギー消費の測定をカロリメトリーと呼んでいます。
 “水1gを1度上昇させるのに必要な熱量を1カロリーとする”と簡単に定義されるが,カロリーは大変小さな量であるため,キロカロリーがしばしば用いられています(1kcal=1,000cal)。
 エネルギーの測定のための新しい単位はジュール(J),キロジュール(kJ),メガジュール(MJ)です。
 ジュールを用いることでより正確にエネルギーを定義でき,またこれはすべての異なった形のエネルギーに適用できます。
 1ジュールは1ニュートンの力で1キログラムの物を1メートル移動するのに消費するエネルギーであり、キロカロリーからキロジュールヘのおおよその変換は簡単になっています。

    1kcal=4.2kJ    IMJ=1,000kJ=240kcal

2. 食物中のエネルギーの測定

 食物中のエネルギー量を測定するためにポンプカロリメトリー(爆発筒熱量計測法)と呼ばれるテクニックが一般に用いられています。
 測定する食物をポンプと呼ばれる小さな箱に入れ,プラチナ触媒下で高圧酸素に暴露し,わずかな電流で点火します。すべての有機物は完全に燃焼され,発生した熱量を測定します。
 しかしながら,体内では,食物中のエネルギーは完全に燃焼されたり,吸収されたりするわけではなく状況はやや違います。
 体内で可能なかぎりすべて酸化した後の放出エネルギー量は,食物の種類によってかなり違います。
 1gの脂肪は1gの糖質(炭水化物)の2倍を超すエネルギーを生成しています。すなわち9kcal(37kJ)と4kcal(16kJ)となります。
 タンパク質は1g当たり4kcal(16kJ),アルコールは7kcal(29kJ)のエネルギーを生成することになります。

3. エネルギー代謝量の測定
 ヒトのエネルギー代謝量はいくつかの方法で測定できる。すべての代謝過程は最終的には酸化過程であり,熱産生が伴うので,エネルギー消費を測定するには主なものとして二つの方法が用いられている。
 一つは直接法で,からだから放出される熱量を測定する方法であり,もう一つは間接法で,酸素消費量を測定する方法です。
 安静時には,ヒトの生命過程の維持に必要なすべての代謝変換から得られたエネルギーは大部分が熱エネルギーの形をとっています。身体の機能を維持するためのエネルギー供給のほかに,この熱エネルギーは体温保持のために利用され,ヒトの生命過程が最適の状況で進行します。
運動中のように,機械的な仕事に利用されるエネルギーの割合が増加したときでさえ,機械としてみた場合のヒトの相対的非効率性のため,全体のエネルギーのおよそ75〜80%は熱として放出されています。
 熱産生量の測定はエネルギー消費量を算定する最も妥当な方法なのですが,実際には,いくつかの欠点があります。
 被検者が呼吸によって体内に摂取した酸素量,すなわちこれが酸素消費量なのですが,これは幸いにも熱産生量と正の相関関係があります。そのため,酸素消費量の測定はエネルギー代謝量の推定の良い指標となっています。
 細胞内の酸化過程では,燃焼される糖質(炭水化物),脂肪,タンパク質という各エネルギー源栄養素の割合によって酸素の消費量と代謝産物としての二酸化炭素の生成量が異なってきます。それゆえ,酸素摂取量と二酸化炭素の生産量の測定によって,エネルギー消費量の測定と同時にどのエネルギー源栄養素が組織中で燃焼したかを測定することができるのです。

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