筋肉の働きとカルシウム
「生きるために必要なカルシウムの働き」は、骨組織を維持するよりも筋肉・神経などの鞍組織における調節作用のほうがより重要です。そのことは、血液中のカルシウム量が常に一定に保たれていて、少しでも多くなりすぎたり低くなりすぎたりすると、すぐに筋肉や神経の働きに異常をきたすことからも明らかです。カルシウムは、筋肉の収縮に対して次のように関与しています。
筋肉(骨格筋や心筋などの横紋筋) の収縮は、ミオシンというたんばく質の層に対するアクチンというたんばく質の層のすべり込み運動によって起こります。このすべり込み運動が起こるためには、まず、アクチンとミオシンが接触することが必要です。筋肉の弛緩状態では、2つの層の間にトロボミオシンというたんばく質が介在していて、この接触を妨げています。
筋肉が神経からの刺激により収縮するのに際して、トロボニンというたんばく質にカルシウムが結合してトロポミオシンの妨害を除去することが起こります。そして同時に、周辺にあるATP分解酵素が活性化してATPが分解し、放出されたエネルギーによってアクチンのすべり込み、すなわち筋収縮が起こります。ですから、カルシウム不足になれば筋収縮が円滑に行なわれなくなります。
横紋筋の中で骨格筋は、もし収縮・弛緩が意のままにならなかったら、不自由でもじつとしていれば命に支障はありませんが、心筋はそうはいきません。寝ても覚めても一定のリズムで働きつづけてくれないと、すぐに命にさしさわりが生じます。低カルシウム状態でも、高カルシウム血症でも、心臓の拍動が異常になり、血液の循環に支障をきたします。
筋肉の収縮は、運動神経からの刺激が筋肉繊維に到達することによって起こりますが、その刺激の伝達にもカルシウムが関係しています。1本の運動神経繊維は筋肉繊維と接触するのに際して、例えばふくらはぎのヒラメ筋の場合にはおよそ150の分枝を作り、150の筋繊維と接触します。
これらを総括して「1つの運動単位」とも言うのですが、それぞれの神経筋接合部では神経の刺激(活動単位と言います)を受けると、蓄えられていたアセチルコリンという刺激伝達物質が放出され、筋繊維に新しい活動電位が発生して収縮が起こるのです。
アセチルコリンの放出にはカルシウムが関係し、もしカルシウムが少ないと、放出が減少して収縮が起こりにくくなります。マグネシウムも関与しますが、カルシウムとは逆に、多すぎるとアセチルコリンの放出が減少します。つまり、神経から筋繊維への刺激の伝達には、カルシウムとマグネシウムとの括抗作用が関与しているわけです。 |