お酒は適量ならば、カラダにもいいが心にも効きます。お酒で脳が酔っぱらうと、ストレス存分に発散できます。この作用が、おそらくアルコールが人間にもたらす最良のものに違いありません。だから幾千年もつきあってこられたと思います。
アルコールは、飲むとそのまま腸からすみやかに吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓で酸化されてアセトアルデヒドになり、さらに酸化されてアセテートとなって肝臓の外へ出て、末梢組織で水と二酸化炭素に分解され、排泄されます。ところが、アルコールの一部はそのまま肝臓から全身に運ばれていきます。
アルコールは水にも脂にも溶ける性質をもっているので、全身の細胞に入っていきます。
脳に到達して中枢神経の働きを低下させますし、胃の細胞を刺激して胃液の分泌を高めます。 そのために、食事時に少量のアルコール飲料を飲むことは、気分をリラックスさせ、胃液の分泌を増やし、食欲を高める効果があります。
(お酒ちょっとメモ1)
人間関係や仕事や環境、ちょっとした変化がストレスを招いています。
明らかな病気やカラタの不調を別とすれば、こうした日常生活のストレスは、適量の酒を飲むことで軽減されます。(自分自身の経験としてよくわかります。)
さて、ストレスというと脳の問題になります。適度のアルコールは、大脳の新皮質をマヒさせてくれます。理性といわれるものは、辺緑系に位置する本能をいつも抑えつけています。そのためにお酒で新皮質がマヒしてくると、その間だけ本能は気ままに振舞えるようになったり、陽気になったり(時々泣き上戸の人もいますが)、これまで思っていても言えなかったことがすっきり言えるようになったりもします。
精神的なストレスの大半は、新皮質と辺緑系の緊張関係の上に生じています。いつもは新皮質の抑制力がまさっていることにより、より理性的に見える人ほどストレスをためているのかもしれません。たまに辺緑系を開放してあげることで、緊張が解かれ、ストレスが消えていく。もちろんいつも本能が出ていては社会生活は営めないものですが・・・
たまに、それも…制限つきで本能が出るくらいがいいと思います。ずっと鎖につながれたままで欲求不満のイヌを、散歩に連れ出すと喜ぶ。それと似たようなものかも知れません。 |
しかし、アルコールにまつわる問題は、アルコールによる「酔いの状態」すなわち多幸感や陶酔感を求めて飲酒をするようになる精神的依存が生じやすいこと、そして、アルコールによって集中力、判断力、記憶力、さらに知覚能力の低下がおこるということです。その結果、自己を抑制することが難しくなるため、つい飲みすぎて大量飲酒につながりやすくなります。
大量のアルコール摂取は肝臓に大きな負担をかけ、さらに脱水状態を招きやすいので、スポーツ選手はあくまでも「ほどはどの量」を厳守しなければなりません。気分をリラックスさせ、食欲を高めるために、少量の食前酒を飲むことは決して悪いことではありません。しかし、飲みすぎは反対にストレスをためることがあります。
ではどれくらい飲んでもいいのでしょうか?
一般社会人の場合はアルコールの血中濃度でいうと0.1%くらい、日本酒なら1〜2合、ビールなら大瓶1〜2本、ウイスキーならダブル1〜2杯くらいまでが適当といわれていのますが、スポーツ選手の場合には、この半分までにすれば許されると思います。個人差はむろんあると思いますが、目安としては、これくらいで切り上げると、安価で効率的で、そのうえ健康的なストレス解消ができるようになります。
(お酒ちょっとメモ2)
酒を飲んだら運動は控えなければいけません。競技者ならいい記録は到底望めないし、ふつうのエクササイズでもカラタに余計な負担をかけてしまいます。
とくに水泳やジョギングなどのエアロビタス運動は大きな影響を受けます。これは、エアロビクスにはたっぶりの酸素とグリコーゲン、のちに脂肪が必要だからです。グリコーゲンは筋肉や血液中にも存在していますが、やはり頼りになるのは肝臓になります。
肝臓は貯蔵していたグリコーゲンをブドウ糖に、脂肪を脂肪酸にして、カラダのエネルギーとして提供しています。ところがカラダにアルコールが入ると、肝臓はアルコールに夢中になってしまいます。アルコールやアセトアルデヒドを分解するのはADHやALDHですが、それを補助する酵素としてNAD(ニコチン酸アミド・アデニンジヌクレオチッド)が必要となります。
この名前は、アスリートなら聞いたことがあるでしよう。グリコーゲンや脂肪を分解するときにも、同じNADが必要なのです。しかも肝臓はアルコールの分解に優先的にNADを使ってしまいます。そのために効率よいエアロビクスは期待できません。二日酔いのとき酒を抜くために走る、というのも同じ理由であまり効果がありません。
たしかにジョギングのあと飲むビールは美味しいかもしれません。しかしスポーツをしたあとのアルコールは、水分の補給にはならず、利尿作用によって、長い目でみればむしろカラダから水分を奪うものとなります。さらに運動直後のアルコールは、心臓に必要以上の負担をかけることを知っておく必要があります。
軽くジョギングすると心拍数は安静時より上がり、血圧も上がります。全身の組織に血をじゆうぶん送り、酸素と栄養を届けるために心臓はピッチを上げています。動悸は意識できるほど激しくなっています。そんなときにアルコールが入るとどうなるのでしょうか。
血圧とアルコールの関係はかなり複雑ですが、大雑把にいうとアルコールとアセトアルデヒドは、はじめは血圧を下げ、ついで上げるように働きます。運動で高まった血圧をさらに上げようとすることになります。この負担はかなり厳しいものです。そのために運動しなくてもお酒を飲むとドキドキするという人は運動直後の飲酒は絶対に避けなければ危険なことも考えられます。しばらくたってから飲めばいいのです。
|
食前酒以外にもスープや前菜などで食欲を高めることができますし、食事の雰囲気というのも食欲や消化機能に大きく影響するので、アルコール飲料だけに頼ることなく、食事全体を工夫するのが大切です。
最後に、アルコール飲料に含まれるアルコールはエネルギーをもっています。
体重のコントロールが必要な選手では、少量のアルコールといえども毎日のことになると、エネルギーバランスが崩れるおそれが出てくるので、主食の量で調整する必要が出てくることを忘れてはいけません。 |