Sports Nutrition スポーツ選手の障害「熱中症について」
 1986(昭和61)年7月31日,午前9時からソフトボールの試合,練習を紛3時間半,炎天下で水分を与えられず続けた。午後0時頃,水飲み場で倒れているところを発見され,救急車で搬送された。
 入院時(午後1時),昏睡,四肢強直,全身痙攣,体温39.7°C,瞳孔は散大,対光反射(一),血圧測定不能。ただちに全身冷却,輸液が開始された。同時に酸素投与,アシドーシスの補正,抗痙攣処置も行われた。
 7時間後,脱水状態は改善され,血圧も安定,体温も38.4°Cとなり痙攣も消失してきた。しかし再び39°C以上の高熱(直腸温41°C),また9時間後には肉眼的血尿が認められた。

 17時間後,無尿,コーヒー残渣物を多量に吐き,突然の呼吸,心停止をきたし,心臓マッサージやカウンターショックに反応しなかった。一度も意識の回復,下熱をみないまま永眠した。

● 熱中症の予防
 熱中症は予防で確実に防げる。子どもを預かるスポーツ指導者は,技術面の向上だけでなく,健康管理にも目を向ける必要がある。その具体的な方法を紹介する。

a.スポーツ現場での水分補給
「真夏のハードトレーニソグは根性を養う絶好の機会だ」,「スポーツ中に水を飲むとだらける」とか,「水を飲むと運動能力が落ちる」などといって水を飲ませない指導者が今もっている。失った水分はなるべく早く補給しないことには運動能力の低下だけでなく,生命の危険にもつながることになる。
 運動時の水分補給が,脱水,体液成分の変化および体温上昇をゆるやかにしてくれ,熱中症の予防に効果があることは広く知られている9,10)。子どもたちにこのことを十分に理解させ、水を飲む習慣を身につけさせることが予防の一歩といえる。

 ◎水の摂り方
 @ スポーツの15分位前にコップー杯のスポーツ飲料を飲む。
 A スポーツ時は飲みたいときに少しずつ(1回に100cc程度)を何回も補給する。
 B ドリンクは冷たいものがよい。胃壁の働きを活発にして水の吸収を早くする。
 C 水,麦茶,ウーロソ茶でも代用できるが、電解質,糖質を含むスポーツドリソクが販売されており便利である。しかし、缶入りの多くは甘くなっており胃に長く残り,水の吸収を遅くするので薄めて利用する。

b.気象条件への留意
 練習,試合会場の気象条件に留意すべきである。当日の天候に応じて練習時間の変更,内容の工夫,また水分補給の量を調節する。次の三点を念頭に置くことが大切である。

 @ 熱中症の多発は6〜9月初旬。
 A 熱中症の起こりやすい条件は気温28°C以上,湿度が60%以上。
 B 気温25°C以下でも,湿度が90%を越えると体熱の放熱がうまくいかなくなり死亡することもある。

c.現場での監視
 暑いさなかスポーツをしていると,熱中症の危険が常にある。運動前・中・後の全般にわたり,子ども達の状態を注意深く観察すると同時に,万が一の場合の処置,救急車の手配など頭に入れておくべきである。

参考文献
1)原頼瑞夫:いまスポーツで子どもが危ない,五月書房,東京・1990
2)Jl憬 貴:ラソニソグと熱中症・臨スポーツ医1く4):364−367,1984
3)川原 貴:熱中症.臨スポーツ医3(6):585−588,1986
4)川原 貴,森本武利,朝山正己ほか:熱中症予防ガイドブック,日本体育協会,1992
5)吉岡敏治,鰍方安行,杉本侃ほか:異常高体温下の生体楼鰭・救急医学14(6):669−677,1990
6)栗山元樹,松野太,植野洋ほか:血清CPK値再上昇をきたした熱中症の救急医会関東誌11(1):72−74,1990
7)森昭裕,橋本修,瀧上雅博ほか:マラソン競技中発症し多彩な臓器障害を呈した熱射病の1救命 例.滋賀医学12(1):3-34
8)山崎郁雄,浜本義一,市原同一:剖検よりみた運動による熱射病と肝障害・振スポーツ医6(11): 1205−1207,1987
9)青木純一郎:スポーツと水分補給(スポーツドリソクを含む)・最新医学43:2190−2194,1988
10)掘田 昇,石河利寛:トピックス・スポーツドリンク・臨スポーツ医1(4):394−396,1984

CopyRight 2007 All rights reserved by Yanzz.net